路地(ろじ)・土縁(つちえん)

露地でもあり露地でもない。土縁でもあり土縁でもない。通り庭でもあり通り庭でもない。昔の店の間を改修した茶室風の小間座敷へとつづくアプローチはまた、内でも外でもない曖昧な空間領域である。直射日光や雨雪を遮り、爽やかな風光を屋内に呼び込む。北陸の気候風土が産んだ知恵。当時の格子窓をさりげなく二重にすることで気密断熱性を高め、冬暖かく、夏涼しい町家として今に蘇る。石畳から三和土(たたき)へと繋がる空間を前に、備えられた手水鉢(ちょうずばち)で身を清め、沓脱石(くつぬぎいし)に足をかければ、今宵の宴にいやがうえにも心が躍る。

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